クールな王子は強引に溺愛する
切れ長の双眼が目を剥いて見開かれた後、凄まじい速さで顔を背けられ、リアムは咳き込んだ。
「だ、大丈夫でしょうか」
「大丈夫だ。気にするな」
近寄ろうとするエミリーを、手を上げて制止する。
「あの、どこかおかしいでしょうか」
咳き込むほど見苦しかったのかしら。
モリーは『エミリー様の美しさに、目を奪われてしまいますよ』と言っていたけれど、あからさまに目を逸らされてしまった。
緊張していた心は、どうしてか萎れていく。
「いや。そういうわけじゃない。明日も馬車旅になる。早めに寝た方がいい」
そう言い置いて、リアムはベッドに体を横たわらせた。エミリーに近い方を空けて横になるリアムは、こちらを背にしている。
エミリーはそっとベッドに体を入れ、同じようにリアムに背を向けて体を横たわらせた。
「おやすみなさいませ」
リアムからの返事はなかった。