クールな王子は強引に溺愛する

「えー!」

 大きな声を上げたモリーが『しまった!』という顔をして、口元を両手で覆う。エミリーも苦笑して眉尻を下げた。

「驚き過ぎよ。モリー」

「閨を一緒にされると言われたので、てっきり」

 前日と同じようにリアム達とは別行動になるエミリー達は、馬車に揺られ王都を目指す。

 あくびひとつしないエミリーをモリーは不審がって『昨晩のご様子は?』と、耳打ちしてきたのだ。

『なにも。お隣で眠らせていただいただけよ』と返した結果が、『えー!』に繋がるのである。

「リアム様は第二王子にあらせられるでしょう? だからその婚約者の私が危ない目に遭わないように、守ってくださるためだったみたい」

 ありのままを伝えると、しばらく逡巡したようなモリーが「うんうん」と、ひとり頷く。
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