クールな王子は強引に溺愛する
「愛されておいでですね」
「はあ〜?」
今度はエミリーが声を上げる番だ。慌てて両手で口を塞ぐとモリーにクスクス笑われる。
「きっと大切に愛されているからこそ、大事にしてくださっているのですわ」
夢みがちに目をキラキラさせて、どこを見るともなく右斜め上を見つめながら両手を胸の前で握りしめているモリーを横目に、エミリーはため息を漏らす。
どこまで楽観的なのかしら。
昨日はリアムと同じ部屋にいるだけで緊張していたはずが、なにも起こらないという安堵からか、知らぬ間に眠っていた。
リアム様がお隣にいらっしゃるのに、眠れる私も相当いい性格をしているわ。
クスリと笑うと、モリーが「なにを思い出していらっしゃるんですか?」と楽しそうに突っ込んでくる。モリーとはしゃぎながらの馬車旅は楽しいものだった。