クールな王子は強引に溺愛する
二度目の宿ではモリーも変な気は使わず、いつもの夜着に着替えさせた。上質なリネンは肌触りが良く、心地よい睡眠を手助けしている気さえする。
リアムの到着は遅れているようで、食事を一緒に取れなかったのは残念だ。同じ空間にいると緊張ばかりしているのに、いないのはそれはそれで寂しいと思うエミリーがいた。
部屋の外に人の気配を感じ、扉の前で「こちらの部屋にエミリー様は先に休まれております」という声が聞こえた。
扉が開き、リアムが入ってきたタイミングでふんわりとしたスカートの裾を持ち上げる。
「お帰りなさいませ、リアム様。このような格好で失礼します」
「ああ、到着が遅くなってすまなかった」
今日は咳き込んだりしないようだ。やはり昨日の夜着は似合っていなかったのだと、再認識する。
「いいものだな」
「え?」
外套の留め具を外しながら、リアムは呟くように言った。
「エミリーの鈴が転がるような声で『お帰りなさいませ』と言われるのは、心地いい」
満足げに言うリアムに、エミリーは感嘆する。
「まあ。リアム様はお世辞がお上手ですわ」
鈴が転がるだなんて。