クールな王子は強引に溺愛する
クスクス笑っているとリアムが穏やかな顔でこちらを見つめていた。
「あの、なにか」
深く濃い碧眼が柔らかく緩められている様は、穏やかなのにどこか落ち着かない気持ちになる。
「いや。エミリーが笑っていると不思議とこちらも幸せな気持ちになる」
精悍な顔立ちを崩して呟いた横顔は懐かしい思い出を蘇らせた。
「レシアス……」
目を見開いたリアムにハッとして、「すみません。思わず……」と、謝るとリアムは首を左右に振りながら微笑んだ。
「懐かしいな。覚えていないのだと思っていた」
幼少期、立場を隠していたリアムとは、少年『レシアス』として出会った。
大人になってから『レシアス』が『アンベリール王国第二王子リアム』だと知ったのは、リアムの名前が『リアム・イグレシアス』だと知ったからだ。『イグレシアス』の『レシアス』を取ったのだろうと想像した。
住む世界の違うリアムとは、噂でしか知り得なかったが、『青みがかった黒髪と深く濃い碧眼の貴公子』という外見も、幼い記憶の『レシアス』と一致した。