クールな王子は強引に溺愛する
しかし実際に会ったリアムは想像以上に精悍で逞しい姿をしており、記憶の中のレシアスと似て非なるものだった。
「リアム様がその、凛々しい雰囲気でいらっしゃったので」
「そうだな。あの頃は今より多少、軟弱だったかもしれない」
幼いレシアスは穏やかに微笑む優しい顔立ちで、物腰も柔らかかった。草花を摘んで渡してくれるくらいに。
「穏やかな優しいお顔をされると、当時の面影がおありです」
目を細めて当時を懐かしむと、リアムは頬を掻き視線を外した。
「エミリーといると顔が緩むようだ。これでは泣く子も黙るリアム元帥の呼び名が廃れる」
リアムは自分の気持ちまで透けてしまいそうで、威厳あるリアム元帥の顔を取り戻すように笑みを消した。
「元帥様は厳しいお顔をされていなければなりませんか?」
エミリーは『レシアス』の面影の無くなったリアムの横顔を、どこか寂しく思いながら見つめる。
「それはそうだな。騎士達に舐められても困る」
それでしたら、私の前だけでも心を緩めてください。
そう言いたい気持ちが喉元でつかえて声に出せない。冷たい眼差しはどこか人を寄せ付けないオーラを纏ってしまったようだった。