クールな王子は強引に溺愛する
リアムは王国内で知らない人はいない見目麗しい王子だ。
剣術に長け、元帥にまで上り詰めた実力者。
家柄は王族で申し分ない上に、男の色香を兼ね備えた貴公子。
リアムが微笑みを向ければ誰しもが卒倒し兼ねない。
リアムの色気漂う眼差しに見つめられただけで扇子を手から滑り落としてしまう令嬢が後を絶たず、ダンスを最後まで踊れた令嬢は称えられると言われるほどの逸話を持つ。
反してエミリーは伯爵令嬢ではあるものの、王国の片隅にある小さな領地の娘。
プラチナブロンドの髪は緩く波打ち、背中で揺れる。美しい湖を思い起こさせる澄んだエメラルドグリーンの瞳と、今摘んだばかりの苺のような可愛らしい小さな赤い唇。肌は陶器のように滑らかで透けるように白い。
美しく可憐だとモリーは常々褒めてくれるが、所詮結婚は家柄が全てだ。
王族のリアムがこんな片田舎の貧乏貴族の娘を娶るとは考えづらい。
「きっとなにかの間違いよ。私のような娘をリアム様が見染めるだなんて」
「謙遜されないでください。エミリー様は本当にお美しいですから」
あり得ない状況をモリーは楽観的に捉えていて、つい反論する。