クールな王子は強引に溺愛する
通された広間は物々しい空気に包まれており、玉座に座る陛下の隣に皇后が座り、その脇には第一王子であるバージルの姿もあった。他にも家臣たちがずらりと並ぶ光景は、畏怖の念を抱いてしまい脚が竦む。
広間の中程まで進んだリアムが跪いて頭を下げた。半歩あとに続くエミリーも片膝をついて腰を低くする。
「顔を上げよ」
威厳ある声に、指先が震える。失礼にならないようにゆったりとした動作で顔を上げると、陛下はエミリーを真っ直ぐに見据えていた。
「エストレリア伯爵令嬢、エミリー・ガルシア。そなたは我が王国の第二王子リアムの求婚を受けたと聞いたが、相違ないか?」
「はい」
震える声で答えると、国王の厳しい顔立ちが一瞬綻んだような気がした。しかしそれも見間違えと思えるほどのほんの一瞬で、次の瞬間には偉大なる王の顔そのものだった。
「リアムよ。お主もエミリー嬢との結婚の許しを乞いに来たのだな?」
「はい」
迷いのない返事に、こんな厳粛な場所なのに胸の奥がキュンと鳴いた。
「よろしい。では、二人の結婚を認めよう」
「ありがたき幸せ」
リアムはもう一度敬意を払い、エミリーもそれに倣って頭を下げた。