クールな王子は強引に溺愛する
国王への謁見は、拍子抜けするほどスムーズに終わった。それはそうだ。王国の第二王子ともあらせられるお方が勝手な行動をし、花嫁を決められるわけがない。
事前に陛下の許しを得てエミリーを迎えに来たのだろう。だからこその王国の迎えの馬車なのだ。
謁見の間を退室し、迷路のように広い城内を進み扉を開けると、そこは回廊のようだった。柱の間から王都が見渡せる。
吹き抜ける風が心地いい。
「とても眺めがいいところですわ」
「ああ。そうか。そうかもしれないな」
エミリーには珍しくとも、リアムには見慣れた風景だろう。ひとりはしゃいでいるようで恥ずかしくなる。
ぐるりと回廊を進み、城の端にある部屋にたどり着く。
「エミリーはここを使うといい」
調度品は上品な色合いでまとめられ、それらを窓から差し込む光が明るく照らす。部屋自体はそれほど広くはなく奥にある天蓋つきのベッドも素敵ではあるが、どう見てもひとり用だった。
これまでの馬車旅のときを思うと、これもまた拍子抜けしてしまう。同室でも特になにも起こらなかったとは言え、寝所が別で夫婦と言えるだろうか。