クールな王子は強引に溺愛する
「そもそもリアム様ほどの人が、私なんかを知っているのがおかしいわ」
「きっと美しい伯爵令嬢がいると噂を耳にして、エミリー様に想いをお寄せになったのですわ」
ますます楽観視する意見を聞いて言い争っても仕方ないと、ため息をついた。
片田舎の伯爵令嬢。今のエミリーはその片鱗さえも見えないのではないか。
質素なドレスとメイドの使うエプロン姿の自分が今さらながらに恥ずかしくなる。
そうであるのに、リアムは森の中で見かけたエミリーに迷わず『エストレリア伯爵令嬢、エミリー嬢で間違いないか』と尋ねた。
もしかして本当に彼も私を覚えていたのかしら。だからこそ今回このような話が……。
モリーに乗せられ、思い上がりそうになる気持ちを鎮める。
いいえ。リアム様にはふさわしいご令嬢の淑女がいらっしゃるわ。
今回の件は、きっとなにか事情がおありなのよ。
気もそぞろなエミリーと、キャッキャッとはしゃぐモリーは夢現なまま屋敷まで戻っていった。