クールな王子は強引に溺愛する
お飾り妃
城を出て石畳の続く中庭を歩く。行き届いた庭園は、色とりどりの季節の花が咲き誇り美しい。
庭師らしき人物が植木の手入れをしており、エミリーはエストレリアにいた頃と同じように声を掛けた。
「とても綺麗な花ね」
声を掛けられた庭師は驚いた表情をさせてから、作業の手を止め帽子を取って胸の前で握り締めた。
「は、はい。ありがとうございます。もしかして貴方様はエミリー様、でしょうか?」
「そうよ。知っていてくれているなんてうれしいわ」
ふんわりと微笑むと、庭師は恥ずかしそうにはにかんだ。
「お聞きしていた通りでございます。どんな者にも親切で、花が大好きな女性だとリアム様から伺っておりました」
「まあ。リアム様から」
自分の知らないところで自分のことを話すリアムを想像すると、なんだか気恥ずかしくもありうれしくもあった。