クールな王子は強引に溺愛する
「リアム様はエミリー様自身が、花のように美しい女性だとも仰られていました」
「言い過ぎですわ」
「だから、つい花を見てしまうと」
まるでリアムが呟いたように付け加えた庭師の言葉に、頬を染める。
花が綺麗だから、つい見てしまうのであって、私を思い出して見ているとは一言も言っていないわ。
自分の都合のいいように捉えてしまいそうになり心の中で訂正しても、浮ついてしまいそうになる。
話題を変えようと、庭師が手入れしていた植木に目を向ける。
「その花は故郷では見かけない花だわ。綺麗……」
薄い紫色の小さな花が房状になって咲いており、風がそよぐと甘い香りがする。
「ライラックでございます。ライラックは涼しい気候を好む品種ですので、温暖な気候の場所では見かけないかもしれません」
「そうなのね。とても綺麗でいい香り」
「リアム様もお好きにございますよ」
是非、お部屋に飾られてください。と、切ってくれた花を持ち、城内へと戻る。
いつもリアムが花を選んでくれているようで、部屋には美しい花が絶えず飾られている。
自分が選んだ花をリアムは喜んでくれるだろうか。弾む気持ちで部屋へと向かう途中、会いたくなかった人物と遭遇してしまった。