クールな王子は強引に溺愛する
安堵の空気が流れ、心のこもっていない称賛を受ける。
「お嬢様ともあろうお方が蜂を恐れぬとは」
「故郷では養蜂をしていたので、蜂には慣れているのです」
本当は小さい頃に刺されて以来、近づかせてもらえていないのだが、ここでは気丈に振る舞っていたかった。なにより蜜蜂は迷い込んだだけで、悪さをしたわけではない。
「ほう。それはそれは」
顎をさすり、感心している風を装うキッシンジャー卿を視界に収めているだけで嫌な気持ちになる。
「では、私はこれで」
踵を返し、その場を立ち去ろうとするエミリーに、女性たちはこの前と同様の噂話を始める。
「蜂を恐れないなどと野蛮ですわ」
「普通でいらっしゃらないから、知らないのですわ」
「幸せですこと」
「リアム様は不正を暴くために結婚されたのでしょう?」
「よほど王国を愛していらっしゃるのね」
「あら、心に決めた方がいらっしゃるから、元帥まで登り詰めたって聞きましたわ」
「では、あの方は身代わり」