クールな王子は強引に溺愛する

 好き勝手に話す女性たちの話を聞いていられなくて、再び歩き出す。思わず立ち止まってしまった自分を口惜しく思いながら、不自然にならないように足早にその場を去ろうと試みる。

「エミリー嬢。あ、いえ、今はエミリー妃でしょうか」

 どこか棘のある呼び方に、顔を引きつらせないように振り返る。

「なにか、ご用がおありですか?」

 キッシンジャー卿は潤沢な資金があると言っていた。城内にも自由に出入りしているのだ。伯爵の中でも力があるのだろう。

 生理的に受け付けない人物ではあるが、必要以上に失礼があってはリアムの名に傷をつけるかもしれない。

「こちらにいるお嬢様方は有力な伯爵家のご令嬢なのですよ。第一王子のバージル様の花嫁候補として、お目通りしていただくために来ています」

 第一王子のバージルはまだ独り身。世継ぎを考えるのなら、早めにどなたかを娶った方がいいだろう。

 そうは思っても、キッシンジャー卿の勧める人を選んでほしくないと思ってしまう自分は心が狭いのかもしれない。
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