クールな王子は強引に溺愛する
リアムに促され行こうとしても、キッシンジャー卿は尚も言い連ねた。
「エミリー嬢はお飾り妃だと噂されていますよ。一向に民に報告しようともしなければ、内外に向けたお披露目もなにも計画されていない」
言われてみれば、王に謁見しただけで、結婚式の予定も、国民への挨拶も、なにもかもの予定をリアムから聞いていない。
これから話してくれるのだと呑気な考えが過ぎったとき、鈍器で殴られたような衝撃が襲う。
「第二王子の妃として、紹介するつもりはない」
顔からみるみる血の気が引いていくのがわかる。視界が歪み、ふらついたエミリーは浮遊感に襲われた。
「今から妻とのお楽しみの時間だ。邪魔してもらっては困る」
倒れたのかと思ったが、リアムに抱きかかえられたようだった。
目を閉じたエミリーはキッシンジャー卿たちから見ると、ただリアムに甘えているだけに見えたようだ。
口惜しそうにリアムを睨むキッシンジャー卿を一瞥し、部屋へと急いだ。
エミリーが大事に抱えていたライラックは手から滑り、可憐な花は見向きもなれないまま床に落ちて小花を散らす。
踏まれそうになる既の所をモリーが拾い上げ、急ぐリアムとグレイソンの後に続いた。