クールな王子は強引に溺愛する

 エミリーを優しくベッドに下ろし、頬を軽く叩く。

「エミリー。どうした? 貧血なのか? 酷く顔色が悪い」

 エミリーはもやがかかった中にいる錯覚を感じていた。リアムが呼んでいる声はぼんやり聞こえるのだが、返事をするのが酷く億劫だ。

「リアム様はエミリー様をお飾り妃にしたいのですか⁉︎」

 モリーが果敢にもリアムに詰め寄っている。その横でグレイソンもため息混じりに言う。

「リアム様。エミリー様に今後のお話をきちんとされましたでしょうか」

 リアムは困惑顔でふたりを交互に見比べる。

「それは追い追いと思っていて、だな」

「これだから、リアム様は!」

 グレイソンに目くじらを立てられ、煩わしそうな顔をする。

「エミリー様は愛情不足です。愛を囁いてくださいませ」

 モリーの無茶振りに、もう一度エミリーを見つめる。愛を囁けと言われても、一方通行の愛を囁けば迷惑に決まっている。今以上にエミリーを困らせたくない。
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