クールな王子は強引に溺愛する
「そうでした。お礼が遅くなりましたわ。いつもお花をありがとうございます。エストレリアに咲いていそうな花をいつも選んでくださるのはリアム様ですね?」
「いや、まあ、そうだな」
今もテーブルに飾られている花は、リアムが用意させたものだ。少しでもエミリーの気持ちが華やぐようにと。
紅茶も、花も、全てを故郷エストレリアに結びつけるエミリーにリアムは質問を向ける。
「エミリー。帰りたいか?」
「えっ?」
声に歓喜が入り混じっているのを感じ、やるせなくなる。自分の手元に置いておこうと思っていた考えは、もはや我がままだったのか。
「いや、帰ると言うのには語弊があるが、俺は王子の座を退こうと思っている」
「え……」
澄んだエメラルドグリーンの瞳が戸惑うように揺れる。
「王子ではない俺には興味はないか?」
どこか自虐的にそう告げる自分が、酷く女々しくて情けない。
顔を背け、片手で額を覆うと、テーブルに置いていたもう片方の手をガッシリと掴まれた。
「いえっ。そんなわけありません! 私はリアム様となら、どこへでもっ。ああ……不躾に申し訳ありません」
掴まれた手はすぐに離されたが、久しぶりに見た人間らしいエミリーに胸が熱くなる。しかも『リアム様となら、どこへでも』と……。