赤い宝石の約束


『まーおー』


男の子の声。


よく知ってる声。


私は海にいた。


透明のビニール袋を持って、何かを夢中で探していた。


『おい!聞こえてるなら返事しろよな。』


『真央、なにしてるの?』


ふたりの男の子。


『見てこれ!綺麗でしょ!』


『拾ってどうすんの?』


『持って帰るんだよ。』


『持って帰ってどうすんだよ。』


『いーじゃん別に!忙しいからもうあっち行ってよ!』


『僕も一緒に集めていい?』


『うん!いいよ!』


『ちぇ、つまんねーな。』


『涼も一緒にやりたいなら仲間に入れてあげるよ。ねぇ、れん〜』


『俺はそんなつまんねーことしねーよ!』


涼はふてくされながら、その場に座ってしまった。


私はシーグラスを探していた。


蓮は遠くの方へ走っていき探していた。  


しばらくすると、


『まーおー見て見て!すごくおっきいの見つけたー!』


蓮が走ってきた。


青くて大きい綺麗なシーグラスだった。


『何これ!すごいよ!これ真央にちょうだい!』


『いいよ!はい。』


ポンっと手のひらに乗っけてくれた。


『蓮!ありがとう!』


すると涼がやってきた。


『うわっ!すげー!やっぱり俺も探そ!』


3人で日が暮れるまで探した。


けど、見つけられたのは小さなものばかりで。


『まおー!そろそろご飯だよー』


お父さんの声だった。


振り向くと、お父さんが手を振っていた。


私は2人に、


『ご飯だってー!』


と言いながらお父さんの方へ走った。


そこで目が覚めた。


お父さん…


私は泣いていた。


父は去年、病気で亡くなった。


私が会いに行く途中で息を引き取った。


どうしてもキャンセルできない仕事が入り、


すぐに行く事ができなかった。


親不孝な娘だ。


悲しみと、後悔と、罪悪感で苦しんだ。


こんなにすぐに亡くなるなんて…


お父さん会いたがってるから顔だして。


母から電話が来てた。


次の休みに行くつもりだった。


でも、その前に亡くなった。


ごめんなさい…


顔を見せられなくて、


サヨナラを言えなくて、


ありがとうを言えなくて、


ごめんなさい…


せめて夢に出てきて欲しいと、


何度も何度も願ったけど、


出てきてくれることはなく…


ずっと待ってた。


やっと来てくれたね。


ごめんね、お父さん…


ありがとう…


忘れないように、手帳に記録した。


お父さんが夢に出てきた事。


小学生くらいの2人の男の子の事。


シーグラスを、一緒に拾った事。


名前は、確か、蓮と涼。


ん?


蓮!?


もしかして清水蓮!?


顔、顔、


どんなだったっけ…


思い出せない…


でも待って!


もし同じ蓮だったら…


私やっぱり会ってたの?


いや、でもどこで?


現実?


夢?


いやいや、偶然かもしれない…


偶然名前が一緒だったのかもしれない…


でも、あの海…


私、行ったことある…


ダメだ…


夢と現実がゴチャゴチャだ…


手帳を閉じた。


しばらく過去の記憶を辿るも、


思い出せず…


でも大丈夫。


きっとまた夢の続き見れるはず。


そう思ったけど、


しばらく不思議な夢を見ることはなかった。

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