ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「そのまま横になっていてくれ」
「いえ。そんな訳にいきませんわ。だって両親のお見舞いに来てくださったのでしょ? ありがとうございます」
それぞれゴルドンに安静を命じられてはいるが、スコットとミリアも屋敷の中にいる。十回目の人生にしてやっと、両親を助けることができたのだ。
「隣国からはいつお帰りになられたのですか?」
もしかしたら帰国したその足でやって来てくれたのではと期待を込めて、ロザンナはアルベルトを見つめる。
すると、アルベルトは苦しそうに表情を歪め、きつくロザンナを抱きしめた。
「心臓が止まるかと思った。頼むからもう無茶はしないでくれ」
絞り出すように発せられた彼の声音には不安や切なさが滲んでいた。
アルベルトはロザンナから体を離すと、そのままベッドに腰掛けて小さく息をつく。彼が疲れ切っているのが伝わり、ロザンナの胸を締め付ける。
「……ご心配をおかけしました」
謝罪はしても、先ほどの彼の言葉に頷くことはできなかった。
これまでずっと、馬の暴走によって起こった事故だと聞いていた。しかし違った。あれは事故じゃなく、襲撃されたのだ。