ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
だとしたら、両親を救えたことを喜んでばかりもいられない。生き伸びたために、また襲撃されるかもしれないのだ。
その時も、命を賭して両親を助ける。だから、無茶をしないという約束はできない。
「アルベルト様、お話があります」
「……話?」
沸き上がる緊張を逃すように深呼吸してから、ロザンナは真摯に申し出た。
「花嫁候補を辞退させてください」
アルベルトが息をのむ。呆然と見つめてくる眼差しから逃げるように、ロザンナは瞳を伏せる。
「今回のことで強く思いました。聖魔法師になりたいと。この力を役立てたい。誰かを救える力をもっとしっかりつけれるように、それだけに集中して学びたいのです」
アルベルトが花嫁に選ぶのはマリンなのだから、妃教育にかかる無駄な時間を聖魔法にすべて注ぎ込みたい。
父に申し訳ないという思いはあれど、言ってしまったことに後悔はない。
アルベルトが「わかった」と頷くのをじっと待っていたが、その瞬間は訪れなかった。
アルベルトはロザンナの手を掴み、首を横に振る。
「嫌だ。辞退させない」
予想外の言葉にロザンナは瞬きを繰り返す。