ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「候補のままでも、学べるだろ」
「で、でも。両方学ぶのは私には難しいと」
「それなら今しばらくは聖魔法に比重を置けばいい。ロザンナの普段の振る舞いからして、妃としてのあれこれは卒業後からで何とでもなるだろう」
思わず目を見開いた。「それはどういう意味でしょうか」というひと言は動揺しすぎで返せず、咀嚼することすら頭が拒否する。
めまいを感じ始めたその時、そっと掴まれた手が軽く引かれ、ロザンナの体がわずかに前に傾く。
と同時にアルベルトも顔を近づけ、耳元で囁きかけた。
「思う存分、ロザンナのやりたいようにやってくれ。応援する。……けど、候補から外れるのは無理だ、諦めろ。俺は絶対に君を手放さない」
呼吸を忘れたロザンナの頬に、アルベルトの柔らかな唇が押しつけられた。
「またすぐに、会いにくる」
にこりと笑ってアルベルトは立ち上がる。少しの乱れもない足取りで、部屋を出て行った。
ロザンナはふらりと上半身を揺らした後、ぱたりと寝転ぶ。
「……り、理解が追いつきません」
ぽつりと呟き、力なく目を閉じる。
ロザンナはそのまま丸一日、混乱とともに眠り続けた。