ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「あぁ、ロザンナ。久しぶりだね」
「ゴルドンさん、今日はお休みですか?」
問いかけると同時に、見知らぬ男性がゴルドンに続いて出てきた。
戸惑いながらお辞儀をするロザンナに、男性は紳士的に挨拶を返し、そのまま診療所を出ていった。
「しばらくの間、さっきの彼にこの診療所を任せることになったんだ」
ゴルドンのひと言に、ロザンナは激しく動揺する。
「そうでしたのね。ゴルドン先生はこれからどうなさるの?」
「俺もロザンナたちと一緒にアカデミーへ。ただし学生ではなく講師としてだが」
「まあ! それでは入学後もゴルドンさんからたくさん教えてもらえますのね。とっても嬉しいです!」
途端、表情を輝かせたロザンナに、ゴルドンは苦笑いした。
「アルベルト様の言っていた通り、聖魔法を学ぶ気満々のようだな。妃教育だけでも大変だと聞いているが、大丈夫か?」
「少し不安でしたが、ゴルドンさんとのご縁が続くと聞いて、俄然やる気が出てきました。頑張ります。……どちらも」
力強い宣言は最後だけ小声になる。
花嫁候補の辞退は、アルベルトに拒否され叶わなかった。