ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています

思わず身構えたロザンナへゴルドンはその内容を囁きかける。


「確かあの事件が起こる前、アルベルト様がアーヴィング伯爵の娘さんと仲良く街を歩いていた話をしていましたよね。それで、ロザンナさんは面白くなかったんだろうなと」

「そっ、そんなことを言ったのですか!」


表情を強張らせたロザンナと、ゴルドンは真剣な面持ちで向き合う。


「違いましたか? ……それとも本当にアルベルト様に好意を持てませんか? それなら力になりますよ。好きでもない相手の花嫁候補として一年もアカデミーに拘束されるのはお辛いでしょう?」


予期せぬ選択を迫られ、ロザンナは狼狽る。数分前なら確実に「よろしくお願いします」とゴルドンの手を取っていただろう。

しかし状況は変わった。自分が残ってもゴルドンはアカデミーに行ってしまう。

一年後、合格しアカデミーに入学できたとして、アルベルトはまだ在学中だ。顔を合わせることもあるかもしれない。

好きじゃないからと断ったら、その時非常に気まずい思いをするだろう。

ぐぬぬと思い悩んだ末、ロザンナは歯切れ悪く答えた。


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