ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
疾走感への恐怖もさることながら、背後からアルベルトに包み込まれているような状態に、ロザンナは落ち着かない。
「な、何を考えていらっしゃるんですか?」
「お詫びの印に、ロザンナとデートをしようと思って」
「お詫びなんて必要ありません。アルベルト様がご自分の花嫁候補と共に過ごされただけなのですから」
言いながら、なぜか声音が暗くなる。
繰り返し見続けてきた、アルベルトとマリンの親しげな姿を思い出しつい顔を俯かせると、アルベルトのうんざりした声が真後ろから聞こえてくる。
「あの頃、アーヴィング伯爵の娘と頻繁に外に出ていたのは、ロザンナのことで贔屓していると指摘されてしまったからだ」
「私のことで?」
「あぁ、俺が頻繁にエストリーナ邸に出入りしているのが、どこからか漏れたらしい。研究を手伝ってもらっているのだけは知られるわけにいかなかったから、彼女に時間を使う他なかった。あちこち連れ回されて、正直疲れたよ」
疲れた。アルベルトから最後にこぼれ落ちた言葉に、ロザンナは面食らう。彼自身が望んでマリンと会っていたのだとずっと思っていたからだ。