ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
この時点でアルベルトはまだそれほどマリンに好意を持っていなかったのか。だとしたら、気持ちが傾くのはきっとアカデミーの入学した後のこと。
こうしてアルベルトと一緒にいるのも今だけかもしれないと、ロザンナがぼんやりと考えた時、小さな笑い声が響く。
「でもまさか、ロザンナが焼きもちをやいてくれるなんて」
「お願いです。さっきの言葉はなかったことに」
「嫌だね」
意地悪な言い方で拒否されてロザンナはがっくりと肩を落とすも、道を行く人々がこちらに注目していることに気づいて焦り出す。
「アルベルト様、どこに行くつもりですか? 人目に付きすぎるとまたマリンさんの不興を買ってしまいます」
「だったら今度はロザンナにずるいと言われたことにすればいい」
「やめてください。女の嫉妬って怖いんですよ。私はアカデミーでの一年を、煽らず騒がず穏便に過ごすつもりなんですから!」
「それは無理だろうな。ロザンナは女神様だから」
そのまま人の目を避けることなく、アルベルトは馬を走らせる。