ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
ロザンナはしばらく顔を俯かせたままだったが、生活圏から離れて目に映る景色が自然豊かになり始めたところで、ロザンナの表情が興味で輝き出した。
あまり街から出ることなく育ったため、物珍しいのだ。
平原から森へと入り、奥深くへとどんどん進んでいく。
やがて小川が現れ、そこでアルベルトは馬を止めた。先に馬を降りた彼の手を借りて、ロザンナも草地へと降り立つ。
「洒落たものが無くて悪いが、これが俺の望むデートだ」
ぽつりとかけられた言葉に、ロザンナは自然と笑顔になる。
「空気が澄んでいて、とても良い場所ね」
小川の水を飲み始めた馬の元へ歩み寄り、ロザンナも綺麗な水に指先で触れる。
「冷たい」とはしゃいだ声をあげて後ろを振り返ると、アルベルトは大木の根元に座り、幹に背を預けた。
そろりとロザンナもアルベルトに歩み寄り、その隣で同じように大木に寄りかかる。
「時々、こうしてのんびりしたくなる」
アルベルトはそう呟き、目を閉じた。そのまま肩に頭を乗せられて、ほんの一瞬ロザンナは目を大きくさせるが、ただ黙って穏やかに微笑む。
束の間の休息。彼の望む時間が流れる中で、ロザンナもゆったりとした気持ちで目を閉じたのだった。