ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
ルイーズの言葉に対し、ロザンナはわずかに肩を竦める。
「所詮は噂だわ。アルベルト様には惹かれている女性がいるようですから」
「これから惹かれるみたいですけど」と心の中で追加した時、バンと大広間後方の扉が開いた。
学園長に続いて、教師が列をなして入ってくる。その中にゴルドンの姿を見つけ、ロザンナはひとり笑みを浮かべた。
これまでもゴルドンが教師としてアカデミーにやってきたことはあっただろうかと記憶をたどるも、明確に思い出すことはできなかった。
続けて、花嫁候補たちから黄色い声が上がる。アルベルトが大広間に入ってきたからだ。
凛とした王子そのものの顔で、彼は壇上に向かって進んでいたが、そばを通り過ぎる手前で目があった。
ふっと笑いかけられ、ロザンナはつい口元を引きつらせる。
案の定、花嫁候補者たちから明暗さまざまな声が上がり、近くにいたマリンからも厳しい眼差しを突きつけられ、ぞくりと背筋が震えた。
数年前の初対面時は、彼女の姿がまだ幼かったため恐怖を感じなかったが、今は違う。
不機嫌な表情が九回目の最期に見た彼女の顔と重なり、怖くて堪らない。