ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています

コンコンと戸が叩かれ、アルベルトが姿を現す。ゆらりと立ち上がったロザンナに目を輝かせた。


「あぁ。ロザンナ。本当に美しい」

「お褒めいただき感謝します」


気持ちのこもっていない声音にアルベルトは苦笑いし、ロザンナへと手を差し出す。ロザンナはここまできたら逃げられないと、その手に自分の手を重ね置いた。

最初のダンスの相手は、アルベルトが会場入りする際も同伴することになっている。手を引かれながら廊下を進みつつ、ロザンナはポツリと問いかけた。


「ダンスの最初にどうして私が選ばれたのですか? 情けないですけれど、テストの結果は優秀と呼べるものではありませんでした」

「ロザンナかマリン・アーヴィングか、選考で揉めた。それで、……宰相が勝って、ロザンナが選ばれた」


ロザンナはこれまでの人生を振り返り、思い出した歯痒さに小さく息をつく。


「実力ならマリンさんでしたのに。悔しかったと思います」


こうしてアルベルトと会場入りするのは、実は二回目だった。一度目は最初の人生。大好きなアルベルトと踊れてとても幸せだった。

二回目は選ばれず、その時、直前の試験の成績で相手を決めるのだと選考理由を知った。

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