ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
確かに、二回目はマリンの成績にあと一歩及ばずだったため納得したが、三回目はマリンよりも成績が良かったのに選ばれず、ひどく落ち込んだ。
父に代わって宰相となったアーヴィング伯爵が「娘を」と推したからだと風の噂で聞き、悔しさに涙を流した。
マリンに同じ思いをさせるのかと心は痛んでいるのに、その一方で、胸が高鳴ってもいた。アルベルトに触れている手が熱い。
大広間の入り口まで来て、すでに待機していた学長へアルベルトと共にロザンナは挨拶する。
学長の少し後ろで並び立つと、今度はアルベルトがポツリとささやきかけてくる。
「まだ言っていなかった。この前はありがとう」
なんの感謝の言葉か分からず目を瞬かせたロザンナに、アルベルトは優しく微笑みかけた。
「魔法院で第二騎士団が世話になった。心より感謝する」
「いえ、お役に立てて光栄です」
「大切な人々をたくさん失うところだった。ありがとう。本当にロザンナには助けられてばかりだ」
頬が熱さに気まずくてロザンナが視線を伏せると、アルベルトが軽く手を引っ張った。