ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「喧嘩でもされましたの?」
思わず呟いてしまい、ロザンナはしまったと愛想笑いを浮かべる。
「余計なお世話ですわね。失礼致しました」
「そんなことは全然」
とても可愛らしい声音に、初めて聞く声だわとロザンナは瞬きを繰り返す。嫌味を言われたのは違う声だ。
今までは三人を一緒くたにしていたが、彼女は切り離して考えるべきかしらと頭を悩ませる。
少し間を置いてから、彼女の方から少し緊張した声音で話しかけてきた。
「この前の、魔法院での姿は本当に素敵でした。私も聖魔法師を目指すひとりとして、ロザンナさんの姿勢を見習おうと思いました」
そんな風に思われていたなど考えもしなく、大きく目を見開く。
彼女の声音がだんだんと柔らかくなっていくのを感じ、ロザンナの警戒も徐々に解けていった。
「最初は動けなかったんです。目の前の光景に怖気付いてしまって。でもロザンナさんやクラスメイトたちに背中を押されて、私も動くことができた。手伝いしかできなかったけれど。ロザンナはすごいわ」
「私は、ああいう光景を目にするのが初めてではなかったから動けただけかもしれません。アカデミーに入る前はゴルドン先生の診療所で手伝いをしていたし、血生臭いのにはけっこう慣れています」