ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています

マリンがなにも言わなくても、取り巻きたちは違う。嫌な言葉を投げつけられ気分が悪いまま昼食を食べたくない。

それに、その逆も避けたい。

ロザンナの後ろにいる花嫁候補たちがマリンに挑発的な態度をとるかもしれない。出来る限り彼女を刺激したくないのだ。

ルイーズもマリンたちに気づいたらしく、立ち止まりはしゃいでいる彼女たちの視線の先へと探るような目を向けた。


「なにを見ているのかしら。……あぁ、アルベルト様がいらっしゃるのね」


飛び出した名前にロザンナの鼓動が小さく跳ねた。

ほんのちょっと背伸びをして目線を伸ばすと確かにアルベルトの姿があり、授業が長引いている様子だった。

その場にいる学生たちはみんな木刀を手にしていた。アルベルトと男子学生が前に出て向き合い、それぞれに木刀を構える。

教師の「始め!」という声が大きく響いたが、彼らはなかなか動き出さない。

しかし、ふたりの様子は対照的だった。

アルベルトは涼しげな顔で男子生徒を見つめているが、男子生徒はすっかり怖気付いてしまっていて木刀を持つ手も足もひどく震えている。


「アルベルト様はかなりの実力者だって聞いているけど、本当なの?」


ルイーズの疑問に、ロザンナは僅かに首を傾げて返答する。

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