ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「どこまでの実力をお持ちなのか、私にはよくわからないけれど、……騎士団に入った兄は自分では歯がたたないと言っていたわ。でもあの対決は、相手がすでに気持ちで負けている様ですし、勝負にすらならないのでは?」
兄の言葉は先日聞いたものではなく、何回目かの人生で聞いた話だ。
これまでの人生でアルベルトが剣を振るって練習している姿を何度も見かけているが、その程度なので彼の実力はわからない。
だからと言って男子生徒に勝ち目があるとも思えず、ちょっとした拍子で木刀がアルベルトにあたらないことだけを祈るばかりだ。
相手は一国の王子。わずかなかすり傷だったとしても、人生を棒に振ることになりかねない。
ロザンナがはらはらする中、男子生徒は教師に煽られ木刀を振り上げながらアルベルトに向かっていく。
不器用に振り下ろされる木刀を、アルベルトが難なく避け続けていると、痺れを切らした教師が「なにをやっている!」と男子生徒を怒鳴りつけた。
その瞬間、アルベルトが鋭く一歩踏み込み、男子生徒の手から木刀を弾きあげた。それはくるくると回転しながら大きな弧を描いて、教師の元へと落ちていく。
教師が木刀を掴み取ると同時に、アルベルトが教師に冷たく微笑みかけた。
「ご指導願います」