ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「それは困るな。アカデミーから出てこないあなたがやっと出てきて、自分からひとりになってくれたんだから」
腕を掴み取った男の目が異様にギラつく。ロザンナは恐怖で体を竦ませた。
「間近で見ると、本当に綺麗な顔をしているな。アルベルトが入れ込むのも納得だ」
「離してください」と声を荒げて男の腕を振り払おうとしたが逆に力強く掴まれ、ロザンナは痛みに顔を歪める。
「現役の聖魔法師でもできないことを、あの年でさらりとやってのけるくらいだ。致命傷を与えて、また命をつなぎとめられてはかなわんからな。今度はしっかりと息の根を止めないと」
吐き出された醜悪な言葉にロザンナの鼓動が重苦しく響く。
両親を襲ったあの事件にこの人は関わっている。そうはっきり感じ取り表情を強張らせたロザンナへ、男がにやりと笑いかけた。
「なあに寂しくないさ。すぐに父親もあの世に送ってやる」
男は左手でロザンナの腕を握りしめたまま、右手でゆっくりと鞘から剣を抜く。
恐怖で完全に動けなくなったロザンナの目に、振り上げられた剣が映る。それが躊躇いなく振り下ろされた瞬間、視界に別の誰かが素早く割り込んだ。