ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
男の剣を短剣で受け止めるアルベルトの姿に、ロザンナの目に涙が浮かぶ。
「ロザンナに剣を向けて、ただで済むと思うなよ」
殺気に満ちたアルベルトの声に反応して、一気にディックの花弁が炎の色彩で染まっていく。
アルベルトから腹部に蹴りを繰り出され、衝撃と痛み、そして気迫に押され、男が大きく後退する。
「少し下がっていて」
掴まれていた手が離れたため自由になったロザンナも、アルベルトの要求に応じるようにふらふらと後ろへ下がっていく。
十分に距離を置いたところで、アルベルトが男に切り掛かっていく。
いつか見た授業での一場面など比にならないほど容赦無く、隙のない動きで男を追い詰めていく。
男も、風の力も使って何とか押し返そうとするが、アルベルトにことごとく押さえ込まれ敵わない。
仰向けで倒れた男の右手をアルベルトが踏みつけた。そして冷たく見下ろしたまま短剣を鋭く振り下ろす。
ロザンナは息を飲んだ。アルベルトも男も、ロザンナも動かない。
場に静寂が落ちたその数秒後、バタバタと足音を響かせて何人かの騎士団員が場に駆け込んできた。