ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
敵か味方か判断できずロザンナは身構えるも、彼らの鞘に青色のクリスタルチャームが付いていて、そして「アルベルト様! ロザンナ!」と前に出てきた兄ダンの姿を見つけ、ホッと体の力を抜く。
「洗いざらい話してもらうからな。覚悟しろよ」
アルベルトに冷酷に告げられ、わずかに切りつけられた首筋から血を流しながら男が呻き声をあげる。
土に刺さった短剣を引き抜いてアルベルトが退くのを見計っていたように、騎士団員たちが男を取り押さえにかかった。
ふうっと息をつき、アルベルトは踵を返す。歩み寄ってくる彼をロザンナもじっと見つめ返した。
アルベルトと向かい合った途端、安堵でロザンナの足から力が抜ける。倒れそうになった華奢な体を、アルベルトは自分の元へとしっかり引き寄せた。
「怪我はないか?」
黒髪、そして瞳に混ざった赤い輝き、そっと視線を落として見つけた紫色のクリスタルチャーム。ロザンナはわずかに笑みを浮かべて話しかけた。
「……やっぱり、あの時の彼はアルベルト様だったのですね」
「あぁ。ロザンナが救った男は俺だ。礼が遅くなってすまない」
ロザンナは微笑んだままゆるりと首を横に振り、そのままアルベルトの背中へと手を回してぎゅっと抱きついた。