ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「早いな」
「今来たばかりです。アルベルト様ももうすぐ試験だというのに、大変ですね」
「優先順位はこっちが高いから仕方がない」
執務机に積まれた書類と欠伸をしたアルベルトを交互に見て、ロザンナは小さく微笑む。
前期の試験の時もきっと同じような状態だっただろう。
けれど彼は、火魔法のクラスだけでなく一学年の共通科目でも一番の成績をおさめていた。努力の賜物だろう。
「お疲れ様です。アルベルト様を見習って、私も頑張らないと」
アルベルトは嬉しそうに目を細めてロザンナの隣に腰掛け、その手が握りしめている封書へと視線を落とした。
「それは?」
「来年度の案内です」
「もちろん進級するだろ?」
「できればそうしたいですけど」
あなたと学業、どちらも望むのは贅沢ですよねと再び思いに囚われる。
表情を曇らせたロザンナをアルベルトは抱き寄せて、ここ最近毎日付けられている青い蝶の髪飾りにそっと触れながら嬉しそうに続ける。
「学生を続けるのは前例がないからと上が騒いでいるが、何の問題があるんだか。俺は逆に楽しみだとさえ感じてる。あと二年、共に学生の身分のまま恋人として一緒に過ごせるのだから」