ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
耳もとで甘く囁きかけられ、ロザンナは顔を熱くし固まる。
落ち着きなく視線を彷徨わせているロザンナをアルベルトは開放すると、ソファーから立ち上がって両腕を伸ばした。
「さて、まずは仕事を片付けるか。……そうだ。試験が無事に終わったら、ひとつ願いを聞いて欲しいのだが」
呆然としていたロザンナだったが、慌ててアルベルトへと顔を向けて、動揺が治らぬまま質問する。
「お願いですか。何でしょう?」
「大したことじゃない。ちょっと付き合ってもらいたいだけだ」
「えぇ。わかりました」
付き合ってもらいたいのひと言で頭に浮かんだのは、かつて連れて行ってもらった森の中にある木漏れ日が心地よいあの場所。
ロザンナはすぐに了承し、封書をバッグにしまう。そして自分も頑張らねばと、代わりに取り出した聖魔法の教科書のページをめくったのだった。
怒涛の試験期間が終了し、これから花嫁候補たちは休暇へと入る。
前期とは違ってすぐに成績が発表されない上に休みは三週間と長いため、マリンとロザンナにとっては気が気じゃない日々が続く。
前回同様、授業があるため実家には帰らず、部屋で昼食をとっていると、向かいに座っているルイーズがロザンナに小声で問いかけた。