ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
ロザンナはどこまでも真剣にアルベルトを見つめた後、少しばかり肩の力を抜いて笑みを浮かべた。
アルベルトは見惚れるようにロザンナを見つめ返す。しかしすぐに気恥ずかしくなったのかわずかに頬を赤らめ目を逸らし、動揺からか早口で言葉を並べる。
「得たものを自分の力にできているなら、それはロザンナの努力の賜物だ。たまたま俺が切っ掛けを作ったというだけの話で……いてっ」
アルベルトが眉を寄せ、己の手元に視線を落としたため、思わずロザンナは彼の元へと歩み寄った。
どうやら本の紙で指先を切ったらしく、切り傷からうっすらと血が滲み出てきていた。
「アルベルト様、血が!」
「これくらい大丈夫だ」
傷口をぺろりと舐めつつ、あっけらかんとした口調で答えるアルベルトに、ロザンナは「でも……」と続けたが、次の瞬間、ガシャンと何かを落として割ってしまったような派手な音が廊下で響き渡った。
図鑑を棚に戻し、何事かと不思議そうな顔で戸口へ足を向けたアルベルトに続いて、ロザンナも歩き出し、彼と共に廊下へと顔を出し様子をうかがう。
廊下にはゴルドンとリオネルがいた。リオネルは転んだらしく床に尻餅をついている格好で、彼のそばには割れた薬品の瓶も落ちている。
「大丈夫ですか?」と声をかけながら、ゴルドンがリオネルの傍らにしゃがみ込むと、リオネルが「すみません」と慌てふためきながら割れた瓶に手を伸ばした。