ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
しかし、今後城に入る機会はあれど、こんな奥まった場所まで来るのは難しい。そのためロザンナにとっては今しかなく、完全に好奇心がまさってしまっていた。
先程よりも幅の狭いレンガ道を、別館の方から微かに漏れ聞こえてくる演奏に気を取られながら進んでいく。
木々の壁の向こうに現れたのは、花壇が一つと一棟の小屋。すぐさまロザンナは花壇へと駆け寄る。
「まぁ素敵」
そこに咲いていたのは真っ白な花。大きな花弁を持つそれは実家で咲いているものと形状が酷似しているが、この色は初めて目にする。
兄の言う燃えるような花弁ではないが、これはこれで綺麗だ。
カークランドは花業も盛んなため、これからどんどん新種の花が生み出されていく。
その先駆けとして、城内で研究が行われていたとしてもおかしくないと、そばに建つ小屋を見ながらロザンナが考えていると、突然「おい」と背後から鋭く呼びかけられた。
「こんなところで何をしている」
警戒心に苛立ちが混ざったかのような声音に、ロザンナの顔から血の気がひいていく。
しかし、黙っていても怪しまれるだけだと覚悟を決めて、身を翻す。
「ごめんなさい!」