ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
顔もあげずにそのまま地面にひれ伏し固まっていると、耳のすぐそばでジャリッと靴底が砂を噛み、ロザンナは体を強張らせた。
「……お前、確か、宰相の娘か?」
問いかけられ、ロザンナはギョッとし顔を上げる。最初の鋭い声音では気づかなかったが、続いた声には聞き覚えがあったからだ。
「ア、アルベルト様」
そこにいたのはアルベルトだった。互いにキョトンとした顔で見つめ合っていたが、ふっとアルベルトは表情を緩めて、気怠げながらも手を差し出してきた。
「いつまでそんな格好している。ドレスが汚れるだろ」
「え? あぁ、そうですね。うっかりしていました」
ロザンナは戸惑いながらも、アルベルトに手を貸してもらって、立ち上がる。
ドレスについた砂を払い落としていると、再びアルベルトから「なぜここにいるんだ」と探りが入った。
「単なる好奇心です」
「好奇心?」
「はい。あの道の先には何があるんだろうって。そんな風に、アルベルト様は好奇心にかられたことはありませんか?」
「ない」
即答され、ロザンナは「そうですか」と半笑いになる。