ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
興味深く見つめるロザンナの真剣な横顔に、アルベルトはわずかに笑みを浮かべてから、おもむろにディックへと手を伸ばした。
「観賞用と違って、この花は顕著なんだ」
彼が花弁に手をかざした瞬間、白から透明へ、透明から炎のような揺らめきへと変化していく。
「燃えてる!」
「燃えてはない。そう見えるだけ」
アルベルトが手を引くと、やがて花も元の白へと戻っていった。兄が見たのはこれかと納得すると同時に、どうなっているのと興味が膨らんでいく。
「すっごく面白い!」
「だろ?」
「私にもできますか?」
「魔力持ちなら反応する。やってみたら?」
ロザンナは目を輝かせながら頷き返し、花と向き合った。微力ながら、ロザンナもアルベルトと同様に火の魔力を有している。
先ほどの燃え盛る花を想像しながら、恐る恐るディックに手をかざす。胸を高鳴らせながら反応を待っていると、徐々に花は透明へと変化し、眩い光を放ち始めた。
ロザンナが「あれ?」と呟くのと、「おっ」とアルベルトが声を弾ませたのはほぼ同時だった。
「お前、光の魔力が使えるんだな」
「……光? 火じゃなくて?」
「いや。火ならさっきのがそうだ。その輝き方は、明らかに光だろ」