ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「艶やかなブロンドの髪に澄んだ湖面のような青い瞳、陶器のような白い肌。水色のドレスで華やかさが増して、本当に素敵。この美しさには、誰も敵いませんわ」
そう発言した女性の目がそれほど離れていないところにいる人々に向けられ、表情に悪意が滲み出す。
話の矛先が変わったのを感じ取り、「待ってください」と慌ててロザンナが口を挟むも、悪意はいとも容易く伝染した。
「本当に。鏡を見たら誰でも気づくことなのに、まったくどうしてあの方はロザンナさんと張り合えると思ってしまったのかしら」
「本当よね。なんて身の程知らずなのかしら」
「お父様が宰相で、力がお有りだからでしょ? あの方だけ、王子から頻繁にアカデミー外でのデートに誘われていたのも、裏で宰相様が国王様に頼み込んでいたからだと……」
「言葉を慎みなさい」
ロザンナが鋭く言い放ち、やっと彼女たちは口を噤んだ。
「そんなものただの噂でしかありません。それに、街からお戻りになった時のおふたりをご覧になりまして? 私にはとっても幸せそうに見えました。それが全てです」