ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
はしたないと思われようが、どうでもいい。走りやすいようにスカートを掴み上げて、ロザンナはパタパタと駆け出した。
「おいおい。良いのかそれで」とアルベルトは苦笑いを浮かべる。
一応お前も、俺の花嫁候補になりたくてきたんじゃないのかとぼやきそうになるも、そんな思いは小さな笑い声と共に消えていった。
「面白い女だな」
ぽつりと思いを口にしながら何気なく花壇へと目を向け、アルベルトはぎくりと顔を強張らせた。
「……嘘だろ?」
ディックの花が一輪、輝きを放ち続けている。普通この花は、アルベルトが試してみせたように、魔力を感じたその時しか反応を示さないものなのだ。
魔力の発動を止めればすぐに元の姿に戻るというのに、しかしその花はいまだに眩いまま。
「確か、ロザンナって言ったっけ」
ロザンナの魔力に反応し続けているディックを見つめながら、アルベルトは興味深そうに目を輝かせて、微笑みを浮かべた。