ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
兄にはマリノヴィエアカデミーに入学し立派な男に、そして妹には次期国王であるアルベルトの妃にふさわしい女性になって欲しいというスコットの考えによるものなのだが、ロザンナは不満だった。
エストリーナは火の家系で、それを自分もしっかり有している。だから私も魔法に関して学ばせてほしいと父に訴えたのだが、あっさり却下されてしまったのだ。
力が微弱であるから学ぶ必要はない。ロザンナに必要なのはアカデミーでの妃教育についていけるように今のうちからしっかり準備しておくことだ、と。
スコットは、ロザンナが花嫁候補に選ばれると信じて疑わない。
そのため何度お願いしても聞き入れてもらえず、諦めきれないロザンナは独学という手段をとるしかなかったのだ。
書斎の奥底に眠っていた火魔法の入門書や教本をこっそり読みすすめては、こうして実践もしている。
初級編として挙げられているのが火球だ。
火魔法の能力者が獰猛な獣などから身を守る初歩的な方法であり、火をつける時や、夜中や暗い場所などの明かりとしてなど、日常生活の中でも様々な用途がある。
魔力の凝縮具合や、形状を保っていられる時間の長さなど、火球を見たら使い手の能力がわかると言われている。