ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
しかも、一般的に広まっている鮮やかな花弁ではなく、魔法薬用のあの白い花の方だった。
「並べて飾っておきましょうか?」と、トゥーリがベッド脇のサイドテーブルへと歩き出す。
赤の隣に白を置く様子を視界に宿しながらこれはいったいどういうことかと呆然とするロザンナへ、スコットがジャケットの内ポケットから取り出した白い封筒を差し出してきた。
封筒には「親愛なるロザンナ・エストリーナ嬢へ」と、それから「アルベルト・オーウェン」と達筆に記名されてある。
「もっと華やかで可愛らしい花はいくらでもあるのに、どうしてあの花なのかと考えてしまったが、ふたりの間で意味があるなら納得だ。まさか私の知らない間に王子と関わりを持っていただなんて」
「お父様、私宛の手紙を勝手に読まれたんですね」
「す、すまない。最初この花は、候補者全員へのただの贈答品かと思っていたのだ。しかし驚いた。まさか王子本人から、しかもロザンナにだけの贈り物だったとは」
目録でも書かれているのだろう程度の軽い気持ちで、目を通してしまったのだろう。
まぁ仕方ないかと思い直すと、今度はこの手紙に何が書かれているのか怖くなる。