ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています

ニコニコ顔の父をちらりと見て、ロザンナは封筒の中から紙を取り出した。



親愛なるロザンナ嬢

先日の私の誕生日に、祝福をいただきありがとうございました。

あの場所に行くたび、この花を好奇心いっぱいに見つめて綺麗だと微笑んでいたあなたが頭をよぎります。

折を見て改めてお礼に伺わせていただきます。

その時のあなたの笑顔も、この花のように輝いていることを願って。

アルベルト・オーウェン



キラキラとした恋文ような文面に、これは王子の名を語った悪質な悪戯かとロザンナの口角が引きつった。


「アルベルト王子の心はもうすっかりロザンナに捕まれてしまったようだな。まぁ確かにロザンナは可愛い。一度見たら忘れられなくなるのも当然だな」


すっかり困惑していたロザンナだったが、父の浮ついたひと言によって、やっと冷静さを取り戻す。

確かに甘い言葉が並んでいるように見えるけれど、実際彼の心はマリンにあるのだ。

今まで候補決定の知らせと共に彼から贈り物や手紙をもらったことなどなかった。

何のつもりだと繰り返し黙読しているうちに、彼の思惑が何となく見えてくる。

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