ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
今度会いに行くから、あの時のようにまたこの花を光らせて欲しい。もしかしたらそんな意味が込められているのかもしれない。
もう一度手紙に視線を落とし、ロザンナは花壇の傍で目にした光景をぼんやり思い返す。
身分も年も下の女に、アルベルトはディックの説明を丁寧にしてくれた。
そんな彼なら、観賞用が光った理由についても明確な返答をくれるのではと期待が膨らむ。
「王子がいついらしても恥ずかしく無いよう、屋敷の掃除の徹底を。それからロザンナ、今すぐお礼の返事を書きなさい!」
スコットの指示を受け、トゥーリは「かしこまりました!」と笑顔を浮かべ、ロザンナは「はい」と頷いて机に戻った。
頭を悩ませつつ書き終えたロザンナの手紙を持って、善は急げと言わんばかりに、早速スコットは馬車に乗り込む。
その姿を、ロザンナは胸の中で不安が揺らめくのを感じながら自室の窓から見つめていた。
両親が馬車の事故で亡くなるのはロザンナが十四歳の時。
三年後のことだが、両親が、またはそのどちらかが馬車に乗り込む姿を目にするたび、もし事故が早まってしまったらと怖くなる。