ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
はっきりとロザンナから真実を告げられても、彼女たちは納得できぬ様子で「でも」とか「けど」などと不満を燻らせる。
それでも、悪意の言葉はひとまず飲み込んでくれたことに、ロザンナはホッと胸を撫で下ろす。
これ以上、悪口を言い続けさせるわけにはいかなかった。なぜなら、数分後に彼女たちはロザンナについたことを後悔することになるからだ。
室内に響かせるように大きく手が叩かれ、ロザンナはハッとし目を向ける。手を叩いたのは扉の近く学長で、集まった花嫁候補たちの視線を一身に浴びながら始まりを告げる。
「アルベルト王子がいらっしゃいました」
扉の傍に並んだ楽士たちが学長から眼差しで促され、王子を迎え入れるための音楽を奏で始める。
結果は決まっている。それなのに、ほんの少し湧き上がった緊張感に、心の奥底では僅かに期待していたのを気付かされ、ロザンナは表情を曇らせる。
明るいメロディが響く中、ロザンナは落ち着かないままに視線を移動させて、息をのむ。とある女性と目があったからだ。
茶色の髪と瞳を持ち、薄紫のドレスを身に纏った彼女は、マリン・アーヴィング。