ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています

笑みを堪えきれていない彼女の目線が、髪飾りに触れている自分の手に向けられているのに気付いて、ロザンナは慌てて姿勢を正す。


「その髪飾り、アルベルト様からの贈り物ですか?」

「え、えぇ」

「ロザンナ様によくお似合いですよ」


トゥーリの表情から、彼女がどう誤解しているかが手に取るように分かり、ロザンナは「違うの」とため息まじりに否定する。


「勘違いしないで。これをもらったことに深い意味はないの。お父様に無駄な期待をさせたくないから、いただいたことは内緒にしておいて」

「本当に勘違いでしょうか? このような素敵な髪飾りだったりあの特殊な花だったり、私にはアルベルト様が他の候補者の皆さんにも同じように贈り物をしているとは思いません。お嬢様を相当気に入っていらっしゃるとしか」


「違うんだってば」とロザンナが繰り返しても、トゥーリのニコニコ顔は崩れない。

まさかこんなに早く言うことになるとはと途方に暮れながら、毎回のように口すっぱく言っている台詞を囁きかける。


「アルベルト様には心に決めた方がいらっしゃるから」


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