ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
ロザンナは思わず頬を赤らめながらも「もうすでに、利用されていたみたいです」と微笑んだ。
ロザンナはアルベルトといると、まるで友人と話しているような気持ちになる。
そして、彼からは婚約者候補というよりも仲間みたいな扱いをされている気持ちに時々なるため、相手にとってもそんなところだろうと予想する。
しかし、その様子を後ろから眺めていたトゥーリには仲睦まじく見えていたようで、アルベルトとの間にある事情を詳しく説明できない以上、誤解を解くのは難しい。
「髪飾りのお礼は何がよろしいでしょうね」とうっとりと頬を高揚させているトゥーリに、ロザンナはお手上げだと軽く肩を竦め、窓の向こうへと目を向ける。
視界を掠めた診療所の看板と、入り口側の花壇に向かってしゃがみ込んでいる後ろ姿にハッとし、「止めて!」と御者へと大きく声をかけた。
声に反応し馬車が停止すると同時にトゥーリが夢から覚めたかのように「お嬢様?」と怪訝な顔になる。
「お返しは本がいいわ。アルベルト様は読書家ですもの。絶対に喜ぶわ」
診療所の隣に本屋があるのを横目で確認しながらなんとか言葉を並べつつ、ロザンナはそそくさと戸を開けて馬車を降りた。